修理レポート」カテゴリーアーカイブ

セイコー鉄道時計 SECOND・SETTING・DIAFLEX(1960’s)

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 先日、修理でお預かりしたセイコーの手巻き式・鉄道時計です。
誤って落下した際に、テンシンが折れてしまったようです。
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 この時計が活躍していたのは1960年代〜70年頃、クォーツ式に変わるまで日本の鉄道で重要な役割を使果たしていた時計です。鉄道の発達と時計の発達・普及には密接な関係があった時代です。船や飛行機、列車といった乗り物と時計の関係は興味深いものがあります。
 この時計のオーナーは、中年の女性の方で、コレクションとかではなく、普段、携帯してご愛用になられていて、愛着も有り、これじゃないとだめなので、どうしても修理したいとのことでした。
 信頼している修理工房に依頼したところ、オリジナルのテンシンを見つけてくれて、めでたく修理が完了しました。
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 大きなテンワ、巻き上げ式のヒゲが時を刻む姿は、機械式の迫力を感じます。
 この時計には、鉄道時計らしい機能がついています。SECOND SETTINGというもので、時間調整の際にリューズを引くとスモールセコンドは、そのまま動き、0秒で自動で止まるハック機構です。普通、ハック機構がある時計の秒針を合わせる場合、タイミングよく0秒に秒針が来た時にリューズを引くわけですが、タイミングを逃すとまた次のタイミングまで待たなければなりません。当時、時刻合わせが日課だったはずの鉄道員さんにとって、きっとなくてはならない機能だったと思われます。

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ダイヤル(文字盤のウラ側)

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 写真は、文字盤を裏返ししたものです。2つ出ている突起は、文字盤の足とよばれるもので、この突起が、ムーブメントの地板に入って文字盤が固定されています。ご覧の通り小さくて華奢なものです。これが衝撃や腐食などが原因で折れることがあります。防水性が高い時計から丈夫だと思い、少々荒っぽい使い方をされる傾向がありますが、衝撃は、別のような気がします。
 衝撃はムーブメントにも悪い影響をあたえますが、ダイヤルの足が折れると、結構厄介です。普通は、ダイヤルの交換になります。国内のアフターサービスに部品の在庫があれば、そう時間はかかりませんが、スイスオーダーとかになると2〜3ヶ月位かかることもあります。 また特殊なダイヤルや、古いモデルなど部品が入手困難な場合もあります。また程よく経年変化をしていた場合交換を躊躇せざる得ない場合もあります。その場合、可能であればロー付けや足を作っての修理になります。
 一旦見積りがでて、分解を進行しているうちに、足が折れているのが発覚して(かくれ骨折)、見積にダイヤル部品代があとで追加される場合もあります。
 いづれにせよ、足は折れないほうが良いですので、落下、衝撃にはご注意ください。

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ネジ込み式ロックを持つ防水の時計。

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防水性モデルで、使用されているねじ込み式ロック、このロック方式は、ネジ溝に摩耗、損傷があると規定の防水性が確保できなくなります。(閉め忘れは問題外です^^:)リューズ側のネジ山に問題がある場合は、リューズを交換のメンテナンスになりますが……
今回コンプリートサービスでお預かりしたハミルトンH776550は、ハミルトンカスタマーズサービから、ケース側のリューズ固定チューブのネジ溝の損耗のためミドルケースの交換という見積もりが出ました。コンプリートサービスにミドルケース交換代金が加算されユーザー様には予定外の自体になりました。このモデルは、20気圧防水でネジ込み式ロックのリューズが3つありその内の一つに問題がありました。

さらにコメントとして

「パーツは、スイス発注となり、入荷作業期間を含めて2〜3ヶ月を予定していますが、(部品)在庫状況、代替部品での入荷、部品製造中止等で内容、期間を変更させてて頂く場合があります。」
とありました。進行のご了承を頂き、約2.5ケ月を要し、幸い代替部品、部品製造中止の事態にはいたらず昨日出来上がって来ました。
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メーカー修理の場合、交換した古いパーツは、偽造防止のため返してくれないいケースが殆んどなのですが、今回交換したインナーケースが戻ってきました。見積もりにはインナーケースと書いてありますがそれは、裏蓋以外リューズを含むケース全体でした。お客さまにとっては出費はかさみましたが、逆にパーツストックが、ある間に、防水性が完全に復帰した修理が出来て、良かったと思います。今後も、安心してお使いになれます。

今回ここに、この事例を上げさせていただいた大きな理由の一つに、添付されていた伝票に下記のようなコメントがあり、ネジ込み式ロックモデルお使いの方に是非お伝えしたかったからです。ご存じの場合でも、つい、やってします場合がありますので。

「(前文省略)〜リューズのネジ込みは、まっすぐに、そして途中で違和感が認められた場合には、一旦緩めた後、再度ネジ込み直してください。」
ネジ溝を損耗を防ぐために、大事に至らないために、覚えておいて損はないと思います。

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OHで里帰り、スマイルディのファーストモデル。

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オーバーホール依頼で里帰りしたアランシルベスタイン ロンド スマルディです。2003年2月にお買い上げいただいた時計です。久々の対面ですが、いい顔してますね。
現在では同じみのスマルディ(曜日を顔の表情で表す機能)は、2001年に角型のペイブ、この丸型のロンド、から始まりました。その後スマイルディは、クロノB,クロノB2、ピクトなどにもついて、今ではアランシルベスタインのおなじみ、定番機能にもなりました。
この時のロンドは、クラブのケースのようで、この翌年2002年にロンドは現在のラグの無いケースで発表されます。このタイプのロンドスマイルディは最初の500本のみだったようです。スマイルディが丸顔(現在はオーバル)なのもこの頃の特徴です。
ちなみに、同時に発売された角型ペイブは、発売直後に、ブレスの装着のためケースの形状が急遽変更され、2つの形のペイブが存在しているのは意外と知られていません。結果、変更前のペイブは、今ではコレクターアイテムになっているようです。当店では、ケース変更前のペイブは、確か3本販売しています。スマイルディのファーストモデル、2001ペイブとロンドは、レアアイテムになりました。
その時は、気にならなかったことが、時間がたってみると、妙に気になってしまう、そんなところも熱心なコレクターを持つこのブランドの魅力の一つでしょうか。

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若気の至ということで…..お許しを。時計にあった二つのサイン。

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昨日、ご年配のご夫婦が、写真の掛け時計をお持ちになれれて、ご主人様が、この時計の機械をいまの電池式のクォーツに変えることができますか?と言われた。
お話をお伺いすると、年をとったから、踏み台にのってネジをかけるのが、おっくうになった。20年位前、修理をした時に、次回の修理の際は、機械を入れ替える方法もあると、私から聞いたことを思い出したからとのことでした。「….う〜20年前か..覚えていない…。言ったかもしれない^^;」
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と心でつぶやきながら時計を見ると、ケースに色あせてはいるけど確かに中慶時計店の文字があるシール。祖父が販売したものか?
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お二人が、お帰りになったあと、外装についた汚れをタオルで拭き取ると、なんと「祝 結婚 昭和三十二年三月八日」の文字。これが、ご夫婦そろってお持ちなったわけで、クォーツになったとしても外装をなんとか残したかったわけですね。
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幸い機械のほうは、洗浄して注油したら調子よく動いてくれました。ホッ。洗浄では、黒い砂粒のような金属の粉が、いっぱい流れでました。時間の垢落ですね。
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表面に、自分のギターのお手入れ用に持っていたオイルを塗らさせて頂きました。機械オイルの香りとオレンジオイルの香りのミックスは、なんか癒される良い香りなので、ゼンマイを巻く作業をいくらか楽しくしてくれるだろうという願いを込めて。
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フランス優勝記念だったんだろう〜KB50

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1998年FIFAワールドカップ フランスこの大会を記念したクロノBをベースにしたモデル。正確にはフランス優勝記念モデルだったかもしれませんね。というのは1998年の春には発表されていなくて、突然発表されて入荷は大会が終了してだいぶたった頃だったように記憶します。フランス代表の優勝に感激してフランス人のアランシルベスタインが製作を思いついたのではないかと思うのです。パーフェクトカタログには世界限定100となっていますが、時計の裏蓋には***/500(5)とあります。クロノBの5シリーズ目の500個のうちの100個が記念モデルに回ったと予想されます。今回、弊社にて販売したものをオーバーホールでお預かりしました。今見てもサッカーとフランスをイメージした魅力あるモデルに仕上がってますね。
この大会は20世紀最後ワールドカップとして、また日本代表初出場という想い出深い大会だったように思います。ジダン、ベッカム、オーウェン、ラウル、ロナウド、デルピエロ….各代表チームのスター選手の活躍も花を添えてくれています。

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1880年代〜THE E.INGRAHAM&COの掛時計。

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昨年の暮れ、地元のご住職がこれ直るかなぁと持ち込まれた古い掛け時計。長く物置の隅にあったとかでホコリがひどく、試しにゼンマイを巻こうとしたらゼンマイの穴が摩耗していて巻くことも出来ず、なんとかなればと思う気持ちはありましたが、これは難しいなぁ、一応お預かり。お正月休みにその気になって調べてみると1880〜1884くらいに製造されたアメリカ製E.IGRAHAM社の由緒正しいも。八日巻き、時報付き、金箔モデルは当時の資料によると当時$9だったらしい。(125年前の$9っていまですとお幾らか?)資料と見比べると針も(短針が折れかかっているものの)オリジナルのようで、少なくとも外装に関しては全てオリジナル部品。第一のハードルであったゼンマイはたまたまうちにあったもので巻き上げたらなんと巻き上げが出来てクリア。これなら洗浄して注油すると動き出すのではと分解開始。しかし…分解を始めると次々に押し寄せるハードルが…….

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